後継者のない農家のための事業

ここまでの記事でも何回か話題にしてきたことですが、農家というのは現在極めて深刻な後継者不足問題に悩まされるようになっています。
実際、数多くの農家が自分の仕事を引き継いでくれる人を見つける事ができず、そのまま廃業してしまっているという現実があります。
しかし、これは非常に大きな社会的な損失となります。
「農家の役割」の記事の中でも紹介したことですが、農家の持っている役割というのは単純に農産物を生産して出荷することだけにあるわけではありません。

同時に、日本としての伝統的な文化を守ったり、自然環境を守ったりというような役割が存在しています。
この農家の役割を維持するためには、なんとかして後継者不足に悩んでいる農家に対して新しい後継者を見つける機能が必用となることでしょう。
こういった背景の中で登場し、特に農家の間で注目を集めるようになっているのが「農業経営継承事業」と呼ばれる事業です。

この農業経営継承事業というのは、その名前の通り農業経営を誰かに移譲したいと考えている希望者と、農場経営の移譲を受けることを希望している希望者をセットとして、それぞれに対して様々な支援を行う事業のことを言います。
中心的になっているのは資金面での援助ですが、それだけではなく様々な援助を期待できるようになっており、今後の農業人口の維持のために効果が発揮されるのではないか、と期待が持たれています。

支援制度を利用する条件

それでは、実際に農業経営継承事業を利用したいという場合、参加するためにはどのような条件があるのかについて紹介します。
まず一つ目の条件となっているのが、当然ではありますが現在のところ「後継者がいない」ということです。
現在すでにその候補がいるものの、今後の不安を考えて利用する、というようなことはできないようになっています。
そして同時に、5年以内に経営を中止することが検討されている、ということも条件の1つとなっています。

つまり、喫緊の課題として後継者問題が発生している場合に利用することができるのが農業経営継承事業であるということです。
当然ではありますが、第三者に対する経営の移譲をする意思がある人でなければ、この制度を利用することはできません。
その意志がない人は言うまでもなく利用しないと思いますが。

そして何より重要なのが、その経営の移譲を受けた人が、その農業を行っていくことによって生活していくことができる程度の経営規模であることが求められるようになっています。
目安となっているのは農業所得が300万円前後あるということであるため、小規模の農家の場合には利用できない可能性がある点には注意しておく必要があるでしょう。