フードロス問題と農家の関わり
生産現場で発生してしまう規格外野菜の行方
まだ十分に食べられるにもかかわらず捨てられてしまうフードロスは、いまや世界的な社会課題として広く認知されています。
しかし、一般的に想像されやすい消費者による食べ残しや飲食店の売れ残りだけでなく、実は農作物を生産する畑の段階でも非常に多くのロスが発生しているのです。
スーパーマーケットなどの小売店に並ぶ野菜には、流通の都合や消費者の見栄えへのこだわりから非常に厳しい規格が設けられています。
そのため、少しでもサイズが小さかったり、極端に曲がっていたり、表面にわずかな擦り傷があったりすると、味や栄養価は正規品と全く変わらないのに、市場に出荷することすらできません。
規格外野菜は、近所におすそ分けをしても配りきれないほどの膨大な量になることが多く、結果的にトラクターで畑にすき込んで肥料にするか、隅に廃棄して腐らせるしかないのが現状です。
手塩にかけて育てた農産物を自らの手で処分しなければならないことは、農家にとって精神的にも経済的にも非常に辛いことです。
生産現場におけるフードロスの解決は日本の農業が抱える大きな急務となっています。
加工品開発による新たな価値の創造
この生産段階での深刻なフードロスを少しでも減らすため、多くの農家が規格外野菜に新たな価値を見出す前向きな取り組みを始めています。
その代表的な成功例が、農業の六次産業化によるオリジナル加工品の開発です。
形が悪くて生食としては売れない完熟トマトをじっくり煮込んで濃厚なトマトソースやケチャップにしたり、強風で枝にぶつかり傷がついてしまったリンゴを丸ごと絞って無添加の100%ジュースにしたりと、形を変えることで立派な人気商品として生まれ変わらせることができます。
また、規格外の野菜を専用の機械で乾燥させて保存の効くドライベジタブルにすることで、スープの具材やヘルシーなおやつとしての新たな需要を開拓することも可能です。
これまで捨てざるを得なかった農産物を知恵と工夫で加工し、新たな付加価値をつけることは、フードロス削減のみならず、農家の経営を安定させるための新しい収入源を確保するという意味でも有効な解決策となっています。
消費者と連携して取り組むロス削減への道筋
生産現場で起きているフードロスを根本から減らすためには、農家側の加工の努力だけでなく、最終的に農産物を購入する私たち消費者の意識改革が必要不可欠です。
近年では、見た目が不揃いであることを個性や自然の証としてポジティブに捉えられています。
規格外野菜を専門に手頃な価格で販売するインターネットのECサイトや、地域に根ざした直売所が急速に増えており、環境意識の高い多くの消費者に支持されています。
「形の悪い野菜でも味は美味しくて安全である」という事実が広く社会に浸透すれば、スーパーなどの大手小売店も過度に厳しい規格基準を見直し、ありのままの姿の野菜を店頭に並べやすくなるでしょう。
また、天候不順などで特定の野菜が想定外に採れすぎてしまった時に、SNSを通じて消費者に直接買い取りを呼びかけ、それに消費者が応援消費という形で応えるケースも増えてきました。
生産者と消費者が互いの状況を深く理解し、手を取り合って協力することで、美味しい農産物を無駄なく消費する豊かで持続可能な社会を築いていくことができるのです。
