種苗法が改正される

種苗法が改正される

種苗法とは、新たに開発された品種に対して、育成者の権利を保護するための法律です。
育成者の知的財産権を守るための法律で、農業版特許法のようなものです。

育成者権を強化するために改正を重ねおり、この育成者権を取得するためには、農林水産省に品種登録の出願をおこない、審査を経て初めて「登録品種」に認定されます。
育成者権を得た育成者は、その品種を独占的に事業利用する権利が得られます。

育成者以外がその登録品種を事業として使用する場合は、育成者の許諾が必要になります。
登録品種の種苗が一般販売されている値段には、育成者への許諾料が含まれているということになります。
育成者は、登録料を払うことで権利を存続することができ、品種登録の存続期間は最長で25年、果樹や鑑賞樹などの木本の植物は30年になります。

改正の背景

今回の種苗法改正では、日本で開発された品種が海外に流出することを防ぐのが最大の目的です。
「登録品種」の苗木はホームセンターなどで手に入りますが、これらを海外へ持ち出すことが問題視されています。

流出した種苗を海外で栽培し、販売されることは日本産ブランドの輸出作物が売れなくなるということです。
例えば「シャインマスカット」は、日本の研究機関が33年の歳月をかけて開発した国産のブランドです。

しかし、シャインマスカットは中国産や韓国産でも栽培されており、タイや香港に輸出販売されています。
日本のシャインマスカットの輸出量低下の要因となっているのが現状です。
こうした国産品種の海外流出は、いちごやさくらんぼ等でも起こっています。

法改正での問題

日本で開発されたブドウやイチゴなどの優良品種が海外へ流出し、第三国で産地化されている事例から、国内で品種開発が滞ることも懸念されます。
そこで、新品種を保護する目的で法改正が行われましたが、この法改正は、日本の農家への締め付けも起こっています。

本改正では、農家が収穫物から種苗を採って作付けを行う場合でも、育成者の許諾が必要になります。
許諾の際に支払う許諾料が高額になったり、手続きが複雑になるなどの負担が増えることが懸念されています。
農林水産省は、国内での流通を厳格に管理することも、海外への流出リスクを軽減させると考えており、この改正への賛否両論があるようです。

改正反対の理由

種苗法の改正は地味なものに思われがちですが、これまで自由にできた自家増殖が許諾制になることは、農家の経営を圧迫することにつながります。
農水省では流通する種苗の9割は一般品種で、改正の影響を受けないとしていますが、作物によっては、登録品種の割合が高いものもあります。

登録品種の割合が高い作物の一つが、サトウキビです。
沖縄県で現在、栽培されているサトウキビのほとんどが、農水省系の研究機関と県によって開発された登録品種です。