害獣との闘い

害獣との闘い

集落の山側一帯にイノシシ対策の柵を設置。土を掘り返したり、実を取り枝が折られ、収穫間近の作物被害は農家にとっては、死活問題です。
このようなことが、各地で深刻な問題となっています。
エサ場と化した集落では、野生動物との闘いが日々行われています。

全国の野生鳥獣被害

野生鳥獣による農作物被害額が平成21年度以降、一時200億円を上回る状況から全国で捕獲体制を強化しました。
その結果、平成29年度には164億円まで減少しています。

被害全体の7割がシカ、イノシシ、サルによるもので、特に、シカ、イノシシによる被害の増加が著しく、鳥獣保護法の改正でシカの捕獲目標を今までの倍近くにしました。
鳥獣被害は、農家の営農意欲の低下をもたらし、耕作放棄地の増加も問題視されています。

野生鳥獣増加の背景

鳥獣被害の増加の要因として、狩猟による捕獲圧の低下、耕作放棄地の増加等から鳥獣の生息域の拡大が考えられています。
狩猟者の減少と高齢化は、狩猟免許の所持者数を比較すると、1990年から2016年までの推移で、29万人から20万人へと3割以上減少しています。
また、狩猟者の平均年齢も、68歳とかなり高齢です。

しかし、シカとイノシシの年間捕獲頭数に関しては、1990年から2016年までシカは4万2000頭から57万9300頭、イノシシは7万5000頭から62万400頭と狩猟者の減少と高齢化にもかかわらず、大幅に増加しています。

捕獲頭数をはるかに超える勢いで、野生動物が増えているということが分かります。
その要因の一つは、農山村で暮らす人たちの食べ物が、シカやイノシシの餌になっているということが考えられています。

たとえば、廃屋や里山に植えられたままで、人間が収穫しなくなった果樹や、果樹園で不良品として捨ててある果実、または家から出る生ごみです。
いずれも人間にとっては無価値なものですが、野生動物にとってみれば立派な食料になります。

シカやイノシシは餌が少ない冬の時期でも、人里に出向けば、食べ物が豊富に転がっている状況です。
その結果、幼獣の死亡率や初産年齢も低下し、個体数はどんどん増えていると考えられます。

野生鳥獣増加の対策

このような実態から、野生動物が農山村を住処としないようにしなければいけません。
農家は正しい知識を身につけ、個々の農家自身で対策をとっていくことが肝心です。

また、集落や農地は野生動物の侵入を防ぐことも重要となります。
一部の自治体では、専門の関係団体と連携をとり、職員の視察や専門の研究員による防止策や道具の説明をしているところもあります。

また、自治体や研究機関が鳥獣の種類に応じた対策マニュアルを作成しています。
近年では、ICTを活用して野生動物の動きを見えるようにしたり、捕獲を省力化するなどの技術進歩も飛躍的です。
これらを利用しながら、農家と住民が自主的に学んで行動していくことが、被害防止の第一歩となるでしょう。