植物工場の黒字化が困難な理由

植物工場の経営状況は?

「未来の農業」と言われ、注目されていた植物工場ですが、経営状況は良いとはいえません。
その背景にあるものは、何でしょうか。

元々は「夢のような空間」と言われていた植物工場です。
温度、湿度を管理した工場で野菜を育てるのですから、画期的なことでした。
天候に左右されることもないので、安定した生産が出来ると見込まれていたのです。

2009年、農業の再生と技術の輸出を期待して作られたのが植物工場でした。
農林水産省から、150億円の補助金も算出され、期待されていたのです。
特にLEDを使う「人口光型植物工場」は当初の6倍に急増するなどで、期待の星だったのでしょう。
しかし、黒字達成は19%で、事業から撤退というケースが後を絶ちません。

苦境の背景は何でしょうか。
一つの植物工場を例にとって、考えましょう。

植物工場が黒字化できない原因は何?

製紙工業がさかんな静岡県富士市に植物工場ができました。
LEDを使い、一日にフリルレタスを12000株収穫できる国内最大級の植物工場です。

ここで、黒字化出来ない理由を探ってみます。
紙の需要が減るため、立て直しの一環として、参入した植物工場です。
立ち上げ時に出る8000万円の補助金も後押しになりました。
しかし、いざ立ち上げてみると、困ったことがあったのです。

植物工場の技術はまだ、発展途上でした。
ですから、そのノウハウは理解されていなかったのです。
大学の実験室のデータはあったのですが、大規模な工場では再現できませんでした。

その理由の一つとして、考えられるのは水です。
「水耕栽培」でしたが、地元の水はカルシウムが多かったため、実験と同じように肥料を入れてもうまく育たなかったのです。

また、温度調節もうまくいきませんでした。
エアコンで温度調節をしましたが、広いために栽培棚の温度が一定にならないのです。

その後、何とか栽培方法を研究して、出荷に行き着いたのですが、ここでも困った事がありました。
値段です。
一般的なレタスに比べ、照明等のコストがかかるので、高くなってしまったのです。

たとえば、一般的なレタスは安い時で100円ですが、フリルレタスは158円です。
少々の差ですが、消費者は、安いものを買ってしまいます。

このような理由で、もうけが出ませんでした。
そうなると、断念する会社も出てきたのです。
2016年末で24社が断念しました。

植物工場の新たな試みとは

ここで、新たな試みがありました。
パチンコ店等を経営する会社が始めた植物工場ですが、このフリルレタスを惣菜に使うという試みに出て、見事、成功したのです。

虫の混入や菌の付着が少ない工場野菜はお惣菜向きです。
お寿司、サンドイッチ、お弁当に使うとうまく馴染み、キレイに仕上がります。

また、レタスが高くなる時期にプリーツレタスのしゃぶしゃぶと言った料理にも使えます。
このように、発想の転換で、良い方向になるという事もあるのです。