人工衛星と農業の現状

人工衛星を利用することによる農業の生産性改善について

人工衛星と農業と聞くと全く異なる2つの産業のように感じますが、ここ近年では2つの性質をうまく合わせた新しい農業が誕生しています。

人工衛星技術を用いた農業のことを「スマート農業」と言い、正確な位置情報を計測していくことにより自動式ロボットやドローンの活用に活かしていくことができます。

人工衛星を使った位置情報の確認といえば、カーナビなどでおなじみのGPSがあります。
GPSはもともと米国で開発をされた技術ですが、現在では日本だけでなくロシアやEU諸国といったところでもごく当たり前に利用できるサービスとなっています。

日本においては「みちびき」という準天頂衛星システム(QZSS)があり、2018年時点で4機が打ち上げられており、今後2023年度以降7機にまで増やすことが決定しています。

この「みちびき」というシステムがあることにより、日本国内であれば山間部や都市部のビル群の中などでも正確な位置情報を計測することができます。
GPSと比較をしてcm単位で細かく計測をすることができるので、今後は高精度な位置情報の確認がしやすくなっていくことでしょう。

最初に述べたようにこの正確な位置情報をもとに農業用の無人搬送機や無人コンバインを動かすことができるようになりますので、人手に頼らない効率的な農業をしていくことが可能になります。

実際の農家による人工衛星を使った事例紹介

実際にこのシステムを導入する技術開発をしているのが、兵庫県尼崎市に本社をおいている「マゼランシステムジャパン」です。
こちらは自社製の受信機を使用することで、農業に必要になる各種重機を自動運転することができるようにしました。

既に大手農機メーカーで採用が進んでおり、実際に自動運転システムのついた農機具を使った農家も運営を開始しています。

単純な自動運転システムではなく位置情報を利用して動かすことのメリットとしては、運転中に多くの情報を同時に収集することができることがあります。

具体的には稲作での作業中に水田のphを確認をしていくことにより、その場所で農業をしていくときのデータとして活用をしていくことができます。

こうしたデータの蓄積は、それまでベテラン農家による経験則で行ってきた作業を自動化していくことにつながるので、今後より一層便利なシステムとして発展していくことにつながります。
実際に農作業をしている場所だけでなく、位置情報システムにより多くの場所での事例を蓄積していくことになるので、そこからさらに品質向上のためのヒントを得ることも可能となります。

現在過疎地域として農業利用がされていない地域も、このデータ活用により農業活用地として使用できるかもしれません。